己の意志の弱さと戦いながら細々と小説書いてます、たぶん。

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プロフィール

林原悠

Author:林原悠
林原悠の煩悩世界」管理人

ネットの片隅の小説書き
趣味:フルート、アニメ、ゲーム
オータムリーフ管弦楽団所属

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【連載小説】「鬼さん此方」第7章(その6)

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「はあ……いつもあんな感じでね、調子狂っちゃう」
 志麻が肩を竦めて苦笑した。何となく、咲季と桂子のやり取りを思い出す。
「優しそうなお母さんですよね」
「……まあ、普段はね」
 そこでお茶を一口啜り、「さて」と前置きをして切り出した。
「航太郎、昨日渡したお札、ちゃんと持ってる?」
「え? ああ、持ってますよ」
 航太郎は学生服の上着に手を突っ込み、内ポケットから取り出して見せた。志麻は満足げに頷いた。
「偉い偉い。ちょっと貸して」
 志麻は航太郎が渡したお札を裏返したりしながら何やら注意深く見つめていたが、
「んー、取りあえず大丈夫みたいだね」
 そう言って航太郎の手に戻した。志麻の行動の意味がわからず、返されたお札を見て目を白黒させていると、志麻はおかしそうに笑い出した。
「航太郎って表情豊かで面白いよね。見てて飽きない。……簡単に言えば、攻撃を受けた形跡がないか確認してたの。昨日も言ったけど、そんなに頑丈なお札じゃないから、何度も幽鬼に襲われたら防ぎきれないんだよ。ほら、昨日の夜さ、航太郎は何かに突き飛ばされたって言ったでしょ」
「はい」
「あたしはその場にいなかったから推測なんだけど、幽鬼の攻撃をお札が弾き返した反動なんだと思う。で、お札はその攻撃に耐えきれなくて裂けてしまったってわけ。よかったね、あの場に和水がいて幽鬼を鎮めてくれて。もう一回襲われてたら航太郎、ジ・エンドだったよ」
そう言って右手の人差し指と親指をピストルの形にし、航太郎に向けて撃った。冗談めかした仕草だったが、昨日の出来事を思い出すと薄ら寒い感覚が走る。あの時の志麻の表現は確か……。
「食われてたってことですか」
「そうだよ。もっとも、それがどういうことなのかはわかってなさそうだね。いいよ、それを説明するために来てもらったんだから」
 そして志麻は、お茶請けに用意された羊羹を竹の菓子切りで小さく切り、口に運んだ。航太郎もそれに倣って羊羹を頂くことにする。口の中に上品な甘みが広がった。しばらく二人でそうして口の中をもぐもぐさせ、ほぼ同時にお茶を啜る。
 ほっと一息ついて志麻は航太郎を見つめた。
「まず、航太郎は鬼って何だと思う?」
 それは明快であると同時に難解な問いだった。

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