己の意志の弱さと戦いながら細々と小説書いてます、たぶん。

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林原悠

Author:林原悠
林原悠の煩悩世界」管理人

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【連載小説】「鬼さん此方」 第3章(その7)

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 やがて航太郎たちの番が回ってきてそれぞれ硬貨を投じて思い思いの食券を購入していく。和水は赤いランプの点った券売機の前でかすかに戸惑いを見せたが、すぐに日替わり定食のボタンを押した。今日の日替わりはほっけの開き定食のようだ。こういう場所に来ても和水の和食好きは変わらないらしい。
「普段のお弁当もそうだけど、和水ちゃんって結構食べるほうよね。それでよくその体型を維持できるわ」
 感心半分、羨望半分といった調子だった。かく言う咲季の手に握られているのは天ぷらそば単品の食券のみ。航太郎や橋本に言わせるとむしろそれで足りるのかと言いたくなるくらいだった。咲季はイメージの割に食が細い。消費エネルギーを考えれば橋本と同じくらいは食べなければ栄養が赤字になりそうなものだ。
「きちんと食べておかなければ、十分に体を動かせませんので」
 和水が恥ずかしそうに言った。女の子である以上、まるで大食いのように言われるのはやっぱり嫌なのだろう。
「和水ちゃん、何かスポーツやってるの? 部活には入ってなかったよね?」
「スポーツと申しますか、武道を少々」
 武道という言葉を聞いて航太郎の心臓が軽く跳ねた。その際のかすかな表情の変化を見て取ったのか、和水はほんのわずかに表情を曇らせた。
「そうなんだ。何をやってるの?」
 咲季が尋ねると、和水は航太郎をためらいがちにちらちらと見ていたが、咲季の興味津々な視線を受け、観念して答えた。
「……薙刀、でございます」
 航太郎の様子をちらちらと窺っているように見えるのは、あの晩のことは黙っておいて欲しいということだろうか。心配しなくても、話したところで他のメンバーには信じてもらえまい。そんなことをこの場で口にしないだけの分別はあるつもりだ。
「へえーっ、かっこいいなあ。だから和水ちゃんってあんなに運動神経がいいんだ。和水ちゃんって日本人っぽいから道着とか似合いそうだもんねえ」
 咲季はすっかりはしゃいでいる。きっと頭の中で道着姿で薙刀を構えている和水の姿を想像しているのだろう。確かによく似合っていると思う。侍のような和装も恐ろしいほど似合っていた。
「咲季ちゃん、藤崎さんは現に日本人なんだから、『日本人っぽい』は変よ」
 桂子がゆっくりと咲季の言葉にツッコミを入れた。
「い、いいじゃない。純和風の美人って意味よ。それくらい察してよね!」
 頬を膨らませてそう言った後、咲季はなおも和水をじろじろと見ながら溜息をついた。
「薙刀かあ。私にもできるかなあ……」
 どこまで本気なのかわからないが、それ以前に何が動機だろうか。
「咲季ちゃんにはきっと無理」
「だよなあ。どう考えても体力が追いつかないって」
 容赦なくコンボを浴びせる桂子と橋本。まあ、和水が通っている道場であれば相当に厳しい場所だろうから、確かに咲季では体力的に厳しいものがあるだろう。そもそも、こう言っては悪いが表に出ている道場なのだろうか。
「そ、そのようなことはございませんよ。精神の鍛錬にもなりますし」
 どよんと落ち込んでしまった咲季を和水がフォローするが、咲季はじっとりとした目で橋本と桂子を見やって言った。
「やめとくわ。あの二人、お腹が裂けるまで笑ってくれそうだし。あ、でも試合があったら教えてね。和水ちゃんの勇姿、見てみたいから」
 泣いたカラスが何とやら、と言わんばかりの勢いでぱっと表情を輝かせる咲季。
 しかし、逆に和水は困ったように顔を曇らせた。
「試合でございますか。あまりそういったものには参加いたしませんので」
「そっか、残念」
 その辺りで、航太郎たちより前に並んでいた生徒たちが捌けたようだった。それぞれに食券を提示していく。
「じゃ、先に行って場所取っとくわ」
 大盛りのカツ丼を盆に乗せて、橋本が歩き去っていった。次いで、咲季、桂子も順に注文の品を受け取ってテーブルへ向かった。
 後ろに順番待ちの生徒を従えてその場に残されたのは航太郎と和水の二人だった。
 薙刀の話を聞いたせいか、航太郎は和水にかける言葉を思いつかなかった。和水もまた、喧噪の只中の沈黙を破る術を見つけきれずにいた。

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